民間学童 フランチャイズ
民間学童フランチャイズの調査記録(全文)
民間学童フランチャイズの比較で使った前提・市場の分析・項目ごとの説明を、省かずに載せます。結論と比較表は民間学童フランチャイズ比較にあります。
前提の説明と試算の記録
売りに出ている教室の売上は、試算よりずっと低い
当サイトは、全本部を同じ式で試算しています。
在籍40人の年商は、在籍40人で試算した9本部の中央値で約2,352万円です(税抜)。
- 一方、売りに出ている1教室の案件は26件ありました。本文に年商が書かれた9件の中央値は1,800万円です編集部の集計。サイトの選択欄も合わせると、26件中13件は年商1,000万円以下でした編集部の集計。
- 在籍数が書かれた1教室の案件は14件で、中央値は22.5人です。当サイトが標準に置いた40人の、ほぼ半分です。
- 売りに出ている教室が、業界の平均だとは言えません。売る理由の選択欄は「選択と集中」が23件で最多です。ただ本文を読むと、赤字と書いた案件が8件ありました。人が集まらない、職員が辞めた、という記述も5件あります。少なくとも、在籍40人を当たり前と考えるのは危険です。
この業態の数字で分かる前提
1. 同じ時間に預かれる人数には天井がある
- 児童福祉法の放課後児童健全育成事業として届出をした学童は、市町村の条例の基準に従います。国の基準では、1つの単位がおおむね40人以下、広さは子ども1人あたり1.65㎡以上、大人は単位ごとに2人以上です。この基準がかかるかは、事業の中身で決まります。塾や習い事のような類似事業として運営するなら、届出の対象外と案内する自治体があります(東京都・横浜市)。一方、保護者が働く家庭の小学生を放課後に預かる事業は、届出の対象になり得ます。
- 届出をしていないこと自体で対象外になるわけではない、と考えてください。どちらに当たるかは自治体が判断するので、開く前に市区町村に確かめてください。
- ここで気をつけたいのは、在籍の人数と、同じ日に来る人数は違うことです。MANABASEの試算では、在籍40人を週5が5人・週3が35人と置いています(週2の料金は非公開のため、この内訳は当サイトの仮置き)。この内訳だと、1日に来るのは平均で約26人です。ただ週3の子が同じ曜日に集まれば、その日は40人になります。
- MANABASEの公開値で当サイトが試算すると、損益分岐は在籍で都市部57人(5人刻みの試算では60人)です。同じ内訳(週5が8分の1・週3が8分の7)なら、1日の平均は約37人です(在籍57人×0.65編集部の試算)。広さと職員が足りるかは、在籍数ではなく、曜日別の利用人数と、いちばん多い日の同時利用人数で決まります。説明会では、既存校の曜日別の利用人数と、その日に何人の職員を置いているかを聞いてください。
- 延長や長期休みの上乗せは、試算で10%足しています。
2. 売上の半分は人件費に消える
- 学童は、子どもがいる間ずっと大人が要る商売です。都内の約25坪・在籍約20人の売却案件では、月の売上110万〜120万円に対し人件費が60万〜65万円でした。
- 学童のパート時給の中央値は1,209円です。2026年度の東京の最低賃金は1,280円で、もう求人の中央値を上回りました。人件費は、これから下がりません。
3. 子どもの安全は、オーナーの責任になる
- 学童は、小学生を毎日数時間あずかる商売です。送迎中・外遊び中の事故は、本部ではなく運営者が向き合います。車で送迎して運転手の人件費相当を取るなら、道路運送法の許可が要ります。Kids Duoの初期費用の表には、送迎の車と運転手の費用が入っていません。
- 11本部の運営会社について、裁判・行政処分・労働関係の公表を調べました。学童の事故やトラブルで本部に結びつく公の記録は、見つかりませんでした。ただ、これは安全の証明ではありません。民間学童の多くは届出をしておらず、国の事故データベースも施設名を出さないからです。安全の体制は、教室ごとに自分の目で確かめるしかありません。
4. 公的クラブの約10倍の料金で売る
- 公的クラブの利用料は、月4,000〜6,000円が最多です。民間学童の週5の料金は、公開している6本部で月4万1,800〜10万4,227円でした。19時以降の預かり、長期休み、英語や学習の上乗せで、この差を納得してもらう商売です。
決め手は3つだけ
1. 何人が、実際にいくら払うか
- 週5の料金だけで売上を計算すると、高く見積もります。週3の料金は週5の66〜73%です。週2〜3回の子が多いと、1人あたりの月謝は下がります。Kids Duo加盟校の売却案件では、1人の月単価は3万〜4万円でした。
- 説明会では「在籍何人」ではなく「週何回の子が何人」で聞いてください。在籍が数人違うだけで、黒字と赤字が入れ替わります。在籍25人の試算では、9本部のどれも都市部で赤字です(いちばん良い本部でも月約24万円の赤字)。
2. 教室長を雇うか、自分が立つか
| 本部 | 説明 |
|---|---|
| MANABASE | MANABASEは月39万円の赤字です。 |
| VISION UP | VISION UPは月約2万円の赤字で、2年目以降のコンサル料の金額が非公開の「一部のみ確認」で、試算に入れていない参考値です。 |
当サイトの試算は、月給30万円の教室長を1人雇う前提です。この前提で在籍40人・都市部の月の利益は、本部への支払いがすべて分かるハウマイツで月約8万円です。
自分が教室長に立てば、その分は手元に残ります。ただそれは、事業というより「学童で働く」ことに近いです。平日は午後から夜まで、長期休みは朝から教室を空けられません。
3. 教室が残っているか、本部が数字を出すか
- 公式の教室一覧を約3年前(2023年)の記録と2026年10月で比べると、起点の教室のうち一覧から消えたのは、多くの本部で年3〜5%でした。たとえばKids Duoは、2023年11月の215校(保存が欠けた2校を補った数)のうち19校です。起点より後に開いて、すぐ消えた教室は入っていません。教室の少ない本部では1校の重みが大きく、MOCOPLAは起点の5教室のうち2教室が一覧から消えています。
- 数字の出し方も見てください。開示書面(JFA掲載)で中途終了の件数まで出しているのは、11本部でKids Duoだけです。既存の加盟校の収支を出している本部は、ひとつもありません。
市場・収益分析の要点と、教室の推移の記録
03市場・収益分析
11社を同じ物差しで調べて分かったこと
照合の起点から現在までで、一覧に新しく載った店より消えた店が多い本部がある
公式の教室一覧を、本部ごとに照合の起点と現在で店名・住所で突き合わせました(期間は本部ごとに違い、約0.7〜3.5年)。直近1年の区切りで店名を突き合わせて集計できた本部は、11本部中0本部です。そのため、この図は照合の起点から現在までの増減です(編集部の判断の「この1年」の表は、一部の本部について一覧を別に数えた値で、対象の本部数を表に書いています)。一覧に新しく載った店より、一覧から消えた店が多い本部が2社ありました。
Kids Duoは一覧に新しく載った店12教室・一覧から消えた店19教室です。
上:照合の起点から現在までで一覧の店が増えた本部/下:減った本部。括弧内は起点→終点の教室数と、一覧に新しく載った店・消えた店の数です(起点+載った−消えた=終点)。一覧の動きで、実際の開店・閉店とは限りません。消えた店には移転・改名を含む場合があります。
黒字に必要な在籍人数を、標準の水準に対する割合で比べる
本部ごとに標準の在籍人数が違うため、黒字に必要な在籍人数を標準の水準に対する割合に直して並べました。低い本部で98%、高い本部で98%です(都市部の家賃)。
低いほど、利用が集まらなくても赤字になりにくい(毎月の本部への支払いの総額を確認できた本部。参考扱いの9社は除く)
初期費用を取り戻すまでの期間(確認できる本部なし)
標準の在籍人数・都市部の試算です。判定に使う回収の期限は10年で、図の縦線が期限です。毎月の本部への支払いの総額と初期費用を確認できた0社のうち、0社は期限内に初期費用を取り戻せません。本部への支払いが非公開・未確定などで参考扱いの9社は、この数に入れていません(本部ページに参考値)。
公表の初期費用に物件取得費が入っていない(入るか分からない)ハウマイツ・スクールも、この図から外しました(物件取得費を足した回収の幅は本部ページに参考として載せています)。
短いほど早く回収できる(開業から6か月で在籍人数が上がる前提)。確認できた0社をすべて表示。回収は、本部が公表した初期費用(判明分の合計・税抜)で計算しています。物件取得費・内装など開業支出の一部を含まない本部は、実際の回収はさらに延びます(立ち上がりの赤字は月別の試算に入れてあり、予備は回収の対象に入れません)
項目ごとの説明・宣伝文句の読み方・言いにくいこと
お金のほかに見る3つのこと
学童は、小学生を毎日、保護者のいない場所で預かる仕事です。
上の「子どもの安全は、オーナーの責任になる」に加えて、次の3つを本部ごとに見ました(全項目の決まりは評価ロジックに書いています)。
1. 事故:届出をした学童だけでも、重い事故は年に761件
- 2024年に国へ報告された重大事故(死亡・意識不明・治療30日以上)のうち、放課後児童クラブは761件でした。前年より113件増え、8割以上は骨折です行政資料。この数字は、届出をしたクラブだけの集計です。届出をしない民間学童の事故は、国の集計に入りません。
- 本部の事故の記録が見つからないのは、事故がないからとは限りません。説明会では、全教室の過去3年の事故の件数と、報告と再発防止の手順を書面で求めてください。
2. 性暴力の防止:2026年12月から「日本版DBS」の認定が始まる
- こども性暴力防止法が2026年12月25日に施行されます。認定を受けた事業者は、子どもと接する職員の性犯罪歴を国のしくみで確かめます行政資料。民間の学童や学習塾にとって認定は任意ですが、保護者が選ぶ目安になっていくはずです。
- フランチャイズでは、気をつける点が2つあります。こども家庭庁のQ&Aによると、加盟店は本部とは別の事業者なので、教室ごとに自分で認定を申請します。本部が認定を受けても、加盟店の教室は認定されません。また、届出をしない民間学童が認定を受けるには、学習や英語などを教え、教える人が3人以上いる、といった「民間教育事業」の要件を満たす必要があります行政資料。
- 11本部で、この認定を取る方針や、加盟店の職員の採用時の確認を募集ページに書いた本部は見つかりませんでした。
3. 送迎:バスで広く集める本部ほど、運行の責任が重い
- Kids Duo とVISION UPは送迎バスで広い商圏から集め、MANABASEは送迎を1回500円で示しています企業公表。送迎に料金を取るなら、道路運送法の許可か、許可のある業者への委託が要ります。保育所や放課後等デイサービスでは、乗り降りのときの点呼と、車内の置き去りを防ぐ装置が義務になっています。学童に同じ義務がかからない場合でも、同じ手順を本部が決めているかを確かめてください。
- 編集部の結論: 判定を変えた本部はありません。どの本部にも、子どもの事故や性暴力で本部に結びつく公の記録は見つかりませんでした。ただ「おすすめ」にする条件に、全教室の事故の件数と再発防止の手順を示すこと、職員の採用時の確認(日本版DBSの認定の方針を含む)を示すこと、送迎をする本部は運行の決まりを示すことを足しました。今の「条件次第」のKids Duoを含め、まだどの本部も満たしていません。
そのまま判断材料にしない宣伝文句
- 利益率や黒字化までの期間。 Kids Duoは2021年に「30%超の利益率」を「約18%」に下げました。「6〜7か月で黒字化に成功」も「半年〜1年を目指します」に変わり、今のページには利益の例がありません。明光キッズeも2023年に「高い収益力」と「開校前から60名以上」の節を消しています。
- 「◯名で黒字化」。 ECCの「30名で黒字化」は、土曜の幼児20名を足した前提です。VISION UPは同じ「72名」を、損益分岐と高収益の両方に使っています。
- 「残り◯枠」「件数に限り」。 MANABASEは2026年3月までのキャンペーンを、10月になっても「残り6枠」と出しています。えすこーとの「加盟の件数に限り」は、約4年9か月同じ文言です。
- 募集ページの教室数。 Kids Duoは「210校以上(2024年2月末時点)」と書きますが、公式一覧は208校です。ハウマイツは「2019年度の募集法人数」を2026年まで載せています。教室数は、公式の一覧で数えてください。
- 待機児童の多さ。 待機児童は年度初めに集中し、10月には半分以下になります。国は学校の中の受け皿を増やす方針です。待機児童の数は、民間学童に月数万円を払う家庭の数ではありません。
- 「資格がなくても開ける」。 面積・職員の配置・資格の基準がかかるかは、上に書いたとおり事業の中身しだいです。送迎で運転手の人件費相当を受け取るなら道路運送法の許可が要るなど、ほかの法令もかかります。開く市区町村に、届出が要るかを先に確かめてください。
表示が変わる理由は、業績だけではありません。プランや対象の変更、表現の見直しでも変わります。どの場合も、過去の数字では契約できません。変わった理由と今の数字を、本部に書面で聞いてください。
言いにくいこと
個人向けで唯一、数字を公開しているMANABASEを「おすすめしない」に下げました。 公開された費用と料金で計算すると、在籍40人でも都市部で月39万円の赤字です。10年たっても初期費用が戻りません。期限の過ぎたキャンペーンの「残り6枠」も、今の条件として有効かを本部に確かめる必要があります。数字を公開した姿勢は評価します。その数字で計算した結果が、この判定です。
- MANABASEの教室数も、数え方で変わります。公式の開校済み一覧は5校で、うち大府は直営の1号校です。加盟校は4校です。ポータルは「FC5店舗・直営1店舗」と書いていて、一覧と合いません。
- 最大手のKids Duoでも、FC校は減っています。 2022〜2024年度に中途終了したFC校は7校、11校、18校でした。同じ期間に、FC校は139校から135校に減り、直営は73校から83校に増えています。本部が買い取ったのか、加盟店が続けられなかったのか。理由の内訳を、必ず聞いてください。
- FCで新しく開くより、売りに出ている教室のほうがずっと安いです。
- 1教室の案件の希望額の中央値は500万円でした(24件)。
- MANABASEの初期費用は1,349万〜1,404万円(物件・内装込み)、Kids Duoは2,864万円です。
- アウラの550万円〜は下限で、上限と内訳が出ていません。
- もちろん売り手の数字は監査されていません。
- それでも、在籍している子どもと職員ごと引き継げる案件と、一度は比べるべきです。
本部の公開情報は、何年も古いままのところが多いです。 アウラの募集ページは、2020年から本文が変わっていません。東京インターナショナルスクールの加盟条件は、2018年から同じです。
本部の厚生年金の加入者数は、支援担当の人数ではありません。 直営校の職員を含むので、直営の多い本部ほど大きく出ます。この記事では、本部の順位には使っていません。
承継・独立開業の説明
それでも学童を開きたい人へ
「おすすめ」が0社なのは、全業態で同じ4つの条件を満たす本部がないからです。
契約相手の会社が分かる。本部に毎月払う合計が確かめられるか、上限が分かる。勧める運営のしかたで利益を計算できる。起点の教室が一覧に残っている。学童だけ条件を厳しくしてはいません。11本部のうち7本部は本部への支払いが非公開、2本部(VISION UP)は2年目以降のコンサル料が非公開の「一部のみ確認」で、公開しているMANABASEは計算すると赤字です。
- Kids Duoは書面が最も厚いものの、月謝と一部の諸費用が非公開で(試算は主要な入力が未確認の参考)、FC校の中途終了も増えています。資料で数字が出れば、判定は見直します。
- FCを使わずに学童を始める道は、確かめられる範囲で3つあります。
- 1. 売りに出ている教室を引き継ぐ。 事業承継サイトには、民間学童の案件が2021年以降で42件出ています。在籍名簿の実数、週何回の子が何人か、職員が残るかを先に確かめてください。届出の有無と、物件の賃貸契約を引き継げるかも確認が要ります。
- 2. 届出をして、自治体の補助を受ける。 東京都の認証学童クラブは、1つの単位あたり年635.8万円の補助があります。国も、待機児童の多い市町村に民間の参入を補助する事業を新設しました。補助型の売却案件では、売上の52〜70%が補助金でした。アウラ小平のように、FCの教室でも市の補助を受けている例があります。ただし補助が出るかは、市区町村の計画と審査しだいです。
- 3. 公設クラブの運営を受託する(法人が対象)。 自治体が設置して民間に運営を任せるクラブは、全国に1万3,543か所あります。そのうち株式会社の運営は4,299か所です。上場大手の学童も、ほぼこの受託型です。放課後児童支援員の資格を持つ人をそろえる必要があります。
- 自分で一から開く場合は、本部に払う売上の10%前後(公開3本部の料率)が要りません。その代わり、集客・採用・保護者対応の型を自分で作ります。教育や保育の事業をすでに持つ人ほど、FCに払う理由は小さくなります。